今『封神』といったら、まずフジリュー版が、そして次にこの「安能版」があがるでしょう。 昔からの封神ファンなら違うかも知れませんが、WJルートで封神にハマッた人間(菱含む)は、まずこれを手にするはずです。 だって、“原作 『封神演義』 安能
務 講談社文庫より”って、コミックスにばっちり書いてありますから。 最初にその一文を本誌で見たとき「WJは集英社なのに、太っ腹だなぁ…。他社の宣伝になるのに」とつい思ってしまいました。 というわけで、フジリュー版の原作は、この安能版になります。
しかし、菱はこの、“原作〜”の一文のない頃に安能版を捜し歩き、手にした人です。この文は、連載開始1年以上経ってやっと挿入されたものなので。 つまり「存在する」という以外に安能版の手がかりがない状態でした。 しかも、まだ中国モノにハマりたて(フジリュー版連載開始の2ヶ月くらい前に「三国志」を読み始めた)だったため、どのような作家さんがいて、どのような時代の作品を、どのような出版社から出しているのかなど皆目見当も付きませんでした。 今ではいろんな意味で想像できないかもしれないこの旅路…
フジリュー版の連載2回目のあとがきで原作の存在を知る。 確か「この話はかなり換骨奪胎している」と書いていらっしゃった。『換骨奪胎』の意味を辞書で調べて(無知)判明。 それまでは、なんとフジリューの創作だと思っていた(-
-;) ↓ やみくもに書店を回り、小説の棚を眺めるが捜しようがない。というか間違えている。 タイトル以外(これだって違うかもしれない。換骨奪胎しているんだったら)、作者も出版社も全て不明でどうするつもりだったのか。 ↓ 地元の図書館に行き、中国系の作品を見てみるが見付からない。 でもそこで『国立図書館目録』という分厚い本を発見し、「国の図書館になけりゃ、どんなに捜したってないだろう」と封神を調べる。 …あった!! 捜し始めて約1ヶ月で作者と出版社判明。 ↓ これだけ分かればすぐ見付かるさ、と高をくくって書店を再び訪れるが、ない。 えぇっ、なんでさ。講談社で、安能務で、封神演義で…ない〜。 もしかして、置いてないってコト!? 漫画化してるのに!? ま、今思えば、当時連載回数は1桁。その上他社作品。 連載が続くのかあやふや(いや、菱は当然続くと思っていましたが)な、海のものとも山のものともつかぬ漫画の原作として、わざわざ版を重ねる出版社はないということかも。 ↓ それでも諦めずに、行ける範囲の書店には日を置いて何度もうろうろと通いつめていた。 捜し始めて2ヶ月後。やっとのことである書店の棚に『封神演義』の文字を一つ発見。 「やった!!」と手にとってビックリ。下巻!! とりあえず購入するも、よ、読めない…くぅ〜。生殺し状態〜。 ますます気合を入れ、書店回りに精を出す。 ↓ そして同じ書店で約半月後、再び『封神演義』の文字。 「もう下巻じゃないでしょ」と手に取る。うん、確かに下巻じゃない。でもどうして中巻っ!? ま、まだ読めない…。 さらに10日後、同書店で3度目の『封神演義』発見。 「今度こそ」と手に取る。当たり。上巻だ…!!
そんなこんなで結局3ヶ月近くかかりました。 「注文すればいいんじゃ」とか言われそうですが、コレはただの菱のこだわりで、可能な限り注文はしないんです。 書店の棚に、目的の本を見つけたときの喜びと、その本をレジに持っていくまでのドキドキは、注文した本では味わえないので。
ところで。 光栄版と安能版、結構内容に食い違いがあったりするんです。 元になってるお話は同じだし、基本的にはほぼ一緒なんだけど、どうも安能版のほうで作者オリジナルのエピソードを相当書き加えているらしいのです。 という話を以前どこかで耳にしたような。 例えば目立つところですと、楊ゼンと竜吉公主の一夜ですとか。 本来のお話(参考:光栄版)では、確かに楊ゼンは竜吉公主のところを訪れていますが、「そのようなコト」は一切ないのです。 ですので、「フジリュー版原作」=「本来の中国語版『封神』の日本語版原作」という式は成り立ちません。 あくまで漫画の原作というだけで、真の意味で原作ではないのです。 極端に言ってしまえば「中国語版『封神』に限りなく近い、創作を織り交ぜた作品」ということになってしまうのでしょうか。 フジリュー版が本来の『封神演義』とは異なるのと同様、安能版も本来の『封神演義』とは異なる、ということです。
けど、「本来の話と違う」と一蹴してしまうのは早計かと。 作品としての面白さを増そうと考えて原作をいじっているんでしょうから、良いにせよ悪いにせよ、登場人物の個性などは光栄版よりもハッキリ出ていると思います。 光栄版では書かれないような日常のエピソードなどが、登場人物に「戦いに参加する者」以上の生活感というのか、そういうものを重ねていき、親しみやすさを与えている気がします。 光栄版しか読まなかったら、多分菱は天祥や蝉玉にはそれほど興味を持たなかったんじゃないだろうか…。
安能版と光栄版の差、この照合をしてみたいと前から思っていたので、まず手始めに、時系列照合…つまり、年表作成を始めました。 もし出来るならば、中国語版原作とも照合したいものです。 |