長安異神伝シリーズ

 

菱が手にする中国モノの作品は、封神関連書籍を探して、いろんなものを辿っていくうちに出会うというパターンが大半です。
この、井上祐美子さんの作品、「長安異神伝」シリーズも、その類。

どこで封神と繋がるか。それはズバリ!『顕聖二郎真君楊セン』です!!

でも、キャラとしては、封神とはちょっと違っていたりもします。そもそも道士じゃなくて、「玉帝の外甥」「神と人間のハーフ」という、本来の顕聖二郎真君(二郎神)の設定ですから。
さらに、それだけ高貴な血を引き、実際天界では禁軍総帥という軍のトップに立ちながら、自らはあまり「神としての力」を発揮しようとはせず、ごく普通の人間として、地上で暮らしているんです。

この作品、舞台はタイトルにある通り、唐の都・長安です。
時代としては「貞観の治」と呼ばれる太宗の治世。
ここで気付かれる方もいるでしょう、「西遊記」の時代と一緒なんですよ。
なので、「もしかしたら三蔵さま位は出てこないかな〜」などと期待していたのですが…出てます、多分。
「多分」というのは…あの、はっきりとは書いてないんですけど、でも絶対三蔵さまだ!と思われる記述が1箇所あるんですよ。
本筋には全くといっていいほど関係ないんですが、見つけたときはちょっと優越感。

…と、話が逸れてしまった。(^ ^;)
この作品、ベースは、長安に巣食う妖との戦いなのでしょうが、菱としては、恋愛の要素がすっごく重要なポイントだと思っています。
封神では、さしあたって特定の相手がいなかった彼ですが、他の小説etcとなると、必ずと言っていいほど「たった一人の想い人」がいるんですね。
それで、この長安異神伝でのヒロインは、蕭翠心
(しょう すいしん)という女性。
玉蘭花に譬えられる涼やかな容姿と、それこそ花のように弱弱しく、それでいて強く、優しい性格の持ち主…といった雰囲気が、文章からも伝わってくるような人です。
そして、彼女もまた、魂は人外のもの。
天界から零れ落ちた、魔を封じる霊玉が人となり、幾度か転生を繰り返したものが、翠心なのです。

二郎さまと翠心。二人の、互いを想う気持ちが、本当にじわぁっと胸にしみるんですよ。
神さまと人、という違いはあっても、その気持ちは、相手の幸せを願えるホンモノの「愛する」気持ちだと思うのです…。

なかなかこッ恥ずかしいことを言ってますが。
他の登場人物も紹介しましょう。
封神関連ではもう一人、韋護が出てます。
彼がまた、原作封神とも、WJ版封神とも全然違いますね。間違ってもオヤジギャグは言いませぬ(笑)。
天界では、二郎さまに次ぐ地位にいますが、純粋な天界人。
彼の性格がだんだんと変わっていくのが、すごく楽しい。
最初の頃はねー、地上を毛嫌いしてたんですけどねー☆

他には、魏徴さま。
一応西遊記に出てるんですよ? ホントに冒頭ですけど。
「ある小説」で、菱的に非常にツボなキャラだったんですが、ここでは、人でありながら天界と人界をつなぐ天官のひとりで、翠心の養父であり、二郎さまの居候先でもあります。
唐王朝でも、かなり高い地位にいるのですが、なんかもう、二郎さまに呼び捨てにされるわ(字
(あざな)ですけど)、タメ口きかれるわ…。
実際の年齢は、二郎さまの方が数十倍上なんだから問題ないんだけど、二郎さまは見かけ20代だからねぇ。

あと…東方朔。
名が知られているのは、漢の武帝の戯臣で、西王母の桃を盗んだことがある、という逸話でしょうか。
この作品では、地上においては、太宗お気に入りの戯臣、しかし天界では、天帝の住まう金闕雲宮の元侍童・太歳童子なのです!
その「元の姿」が10歳くらいの美少年、ていうのもオイシイんですが、なによりその言動が面白いんです。
どうもいっつも一言多いのか、すぐ二郎さまにどつかれる。そのやりとりが良い感じ。

この辺までが、実際に伝承を持つレギュラー陣でしょう。
まだまだいっぱいいるんですよう、紹介したい人物は。
でもここは、この位で締めて、あとは個々の作品別に語っていきましょうか。

 

第1巻 「長安異神伝」

第2巻 「乱紅の琵琶」

第3・4巻 「将神の火焔陣」

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追加情報!!(+α)

この長安異神伝シリーズ、徳間新書で1991年から、徳間文庫で1996年から出版されていたのですが、ここ1年くらいは書店の棚に並んでいるのを見ていなかったんですね。
愛する作品が、書店にないのは寂しいものです。
しかし!!

2001年5月25日、「長安異神伝」、なんと今度は中公文庫から発売!

いやいやいや、驚いた。
こういうことは、よくあるんでしょうか? 出版社が変わるっていうのは。

新書版は、書店でたった一度、ちらっと見かけただけなので、詳しいことは分かりませんが、確か挿絵が入っていたんです。
でも、菱の持ってる文庫版には挿絵はない。
そんなわけで菱としては、三たびの出版を知ったとき、まず「挿絵が入らないものか…」と望んでいたわけですよ。
発売から数日後、やっと発見(店に置いてあるない以前に、菱が店の開いている時間内に行けなかった)。
でも、叶わず。挿絵はナシです。
その代わり(?)、書評と参考文献のページが追加!(スイマセン、書評どなただったかまで見てこなかった…)
カバーイラストも変わっていました。
徳間では陳淑芬さんによる美麗人物画(主に二郎さまと翠心と思われる)でしたが、中公文庫では、なんでしょうか、静物画?
絵としてはシンプルですが、注目は色! 綺麗な夜の青です!

因みに第2巻の「乱紅の琵琶」も既に発売されてます。
こちらはタイトルどおり、淡紅色のカバーです。

P.S.(2001-12-4)
これ…連続して発売されるかと睨んでたんですが…で、出てこない、3巻以降がッ!!
2つだけなんでしょうか? 何か寂しひ……。
今度見かけたら買っちゃいましょう、皆さん! 売り上げ伸びれば続刊出るかもしれないし!?

P.S.2(2002-2-10)
書店の文庫本発売予告をぼんやりと見ていたら、唐突に発行再開しているではありませんの!!
「将神の火焔陣(天長編)」今月の新刊で、中公文庫から出版されています。
今月下旬かと思いきや、先週末に偶然見つけてしまいました。
表紙が、人物画に戻ってますねー。でも徳間文庫とはかなり違うですねー。
印象も、徳間は「青」だったのに、今回の中公は「赤」…「朱」…? そんな感じ。
なんにせよ、発行再開バンザイ!!

P.S.3(2002-3-5)
うわっとぉ、連続出版だぁーvv
(天長編)に続いて(地久編)も出ましたよ!
これまた偶然に、ふらふら書店内を歩いていて、ふと目を遣った所に平積みになってるのを発見。
(地久編)、表紙は「青」。これ見てやっと気付いた…中公版・(天長編)の人物画は、二郎さまでした!!(遅ッ)
で、この巻の人物画は、というと…読んだ人には分かる。
菱に言えるのはココまでです、多分。

P.S.4(2002-9-1)
しばらく書かないでいるうちに、あれよあれよと最終巻・「暁天の夢(下)」まで発行されてしまいました。書店チェックは欠かさずやってましたけど。
「将神の火焔陣(天長編)」以来、表紙が人物画に統一されたようですが、知ってる人間が見ると「あっ!! 彼(or彼女)ではないデスカ!!」と一瞬ほわんと幸せになれます。というか、なりましたv
最終巻はですね、あとがきが徳間文庫と変わってて、今回の中公文庫での再発売に際し新たに書き下ろされたようです。
…え、もしかして、作品に少々手直しを加えられたのでしょうか…井上さん。
うぬぬ、そうなると気になっちゃうじゃないですか〜。買って読んで、どこが訂正されたのか知りたくなっちゃうじゃないですか〜。

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